⏱ 約 20 分 · Linux サーバに「会いに行く」
Part 1Chapter 01/Linux 基礎

初回ログインと bash プロンプトの読み方

SSH の仕組み、踏み台 → 演習用サーバの 2 段接続、プロンプトの読み方 ── Linux サーバへの「会いに行き方」を、自分の手でできるようになります。

所要時間約 20 分
章タイプstandard
前提知識特になし(Web ブラウザが使えれば OK)
使用機材踏み台 workstation01(ブラウザ内ターミナル)+ 演習用サーバ learner01
関連章前: なし(Part 1 の最初)/ 後: Chapter 2「ファイルシステム階層」

ようこそ、Linux の世界へ

「Linux を学んでみたい。でも、どこから始めればいいか分からない」── そんな気持ちでここに来た方に、まず伝えたいことがあります。

最初の一歩は、Linux サーバに「会いに行く」ことです。

ターミナルとは? 黒い画面に文字を打ってサーバに命令する道具です。今日はこれを使います。難しそうに見えますが、やることはシンプル——コマンドを 1 行打って Enter するだけ。

サーバは普段、データセンターの暗い部屋でひっそり動いています。ディスプレイを覗き込む人はほとんどいません。代わりに、ネットワーク越しに、文字だけで対話します。その対話の入口が、SSH (Secure SHell) という仕組みです。ssh ユーザー名@サーバ名 という形のコマンド 1 行でサーバに繋がります。(AWS EC2 経験者の方へ: あの ssh ec2-user@… と同じです)

この章での「2 段構え」の話

実は、現場では本番のサーバに直接インターネットからは入れないようになっていることがほとんどです。間に踏み台(ふみだい / jump host / bastion)と呼ばれる入口専用のサーバを挟みます。受講環境も同じ構造にしてあります。

受講環境は「2 段」でつなぐ 🖥 あなたのブラウザ どこからでも Guacamole (画面転送) workstation01 踏み台 / 入口 SSH 🔒 暗号化 learner01 今日の演習対象(本体)
ブラウザ → 踏み台 workstation01 → 演習対象 learner01。奥のサーバへは直接入らず、踏み台を 1 枚かませる。

実際に手を動かすときは、右の「演習サーバへの接続方法」から Guacamole(=ブラウザだけでリモートのデスクトップやターミナルを開けるツール。専用ソフトのインストールは不要です)経由で、踏み台 workstation01 のデスクトップを別タブで開きます。そこには、すでに alice というユーザーでログインしたターミナルが用意されています。ここから先は、その踏み台ターミナルで何が起きるのかを一緒に追っていきましょう。接続して同じ操作をしながら読んでも、まず読みものとして読んでから接続しても、どちらでも大丈夫です。

これから、その踏み台からもう一段奥にある演習用サーバ learner01 に SSH で入ります。20 分後には、踏み台 → learner01 と 2 段つないで、「自分は今、誰として、どこに居るのか」を確認できるようになっているはずです。

この章のゴール: 20 分後に、踏み台 workstation01 から演習用サーバ learner01 に SSH でログインし、プロンプトを読んで「今どこに居るか」を自分の目で確認できるようになっている。

この章を終えるとできること

SSH の仕組みを知り、「入る・読む・確かめる・出る」の 4 動作が自分の手でできるようになります。

$ ssh student@learner01
student@learner01:~$
① 入る
踏み台から演習用サーバに
自分の手でログインできる
ssh
student@learner01:~$
ユーザーサーバ場所
現在地が読める
② 読む
プロンプトを見て
今どこに居るか分かる
prompt
$ whoami
student
$ pwd
/home/student
③ 確かめる
誰として・どこに居るかを
コマンドで確認できる
whoami · pwd
$ exit
alice@workstation01:~$
④ 出る
ログアウトして
踏み台に安全に戻れる
exit

概念説明

1. SSH ってなに? ── ネットワーク越しの「窓と本体」

SSH は、ひとことで言うと 「ネットワーク越しに、別のコンピュータの中で文字をやり取りする」仕組みです。イメージとしてはこんな感じです:

SSH:手元の「窓」と、向こうの「本体」 🖥 ターミナル(窓) 踏み台 workstation01・今ここ alice@workstation01:~$ 🖧 シェル bash(本体) learner01・コマンドが実際に動く所 student@learner01:~$ 実体はこちら側 ▶ 打った文字 ◀ 実行結果 🔒 暗号化された通信 あなたが打つ場所=窓 実際に動くのは本体側
手元のターミナルは「窓」、向こう側のシェル(bash)が「本体」。文字は暗号化されて往復する。

あなたが踏み台のターミナルで ls と打つと、その文字が暗号化されて learner01 に届き、向こうで ls が実行され、結果が暗号化されて戻ってきます。踏み台のターミナルは「窓」で、向こう側のシェルが本体、という関係です。

なぜ暗号化されているかというと、SSH が生まれた 1990 年代に、それまで主流だった telnet という仕組みが「パスワードが平文で流れる」という致命的な弱点を抱えていたからです。SSH はそこを直すために作られました。今、サーバ管理で SSH 以外を使う場面はほとんどありません。

下の図は、ssh student@learner01 を打ってから結果が戻るまでを 6 ステップで追ったものです。▶ 次へ を押しながら、踏み台 workstation01 と演習サーバ learner01 の間で何が起きるかを目で追ってください。

SSH:窓(手元)から本体(奥のサーバ)へ — 時間は上から下へ ↓ 🖥 workstation01 窓(手元・あなたは alice) 🖧 learner01 本体(実体・bash が動く) 窓=細い線 本体=太い柱 まだ別々(未接続) 1 🔒 暗号化トンネル区間 3 ssh student@learner01 ▶ 行き 2 パスワード ▶ 行き 確認 OK · student ✓ ◀ 戻り 4 student@learner01:~$ bash 起動=本体の柱の中で動く 5 コマンド結果 ◀ 戻り 6 student@learner01:~$ 窓に同じ表示が出る 見ているのは、本体の中身を映した「窓」だけ ── これがこの章の核心
STEP 1 / 6

(読み込み中…)

2. プロンプトという「現在地表示」

SSH で learner01 にログインに成功すると、こういう表示が出ます:

prompt
student@learner01:~$

これを プロンプト と呼びます。プロンプトは「次のコマンドをどうぞ」という入力待ちの目印であると同時に、今あなたがどこに居るかの現在地表示でもあります。各部分の意味を分解してみましょう:

部分意味読み方の例
studentログインしているユーザー名「student として」
@区切り記号「at」
learner01接続先のホスト名「learner01 で」
:区切り記号
~現在のディレクトリ(=Windows でいうフォルダ)。「自分のホーム」の省略「ホームに居る」
$一般ユーザーの入力待ち。# は管理者で危険

つまり student@learner01:~$ を声に出すと、「student として、learner01 で、ホームに居て、コマンドを待ってます」 という意味になります。

慣れてくると、プロンプトを一目見るだけで「自分は今どのサーバの・誰として・どこに居るか」が瞬時にわかります。複数のサーバに同時に入って作業するようになると、この習慣が事故を防ぐ最強のお守りになります。本番サーバで開発用のつもりで rm -rf を打って真っ青になる、という事故の多くは、プロンプトを見ない癖から生まれます。

演習:踏み台から演習用サーバへ「会いに行く」

項目
出発地点踏み台 workstation01(あなたは alice でログイン中)
接続先演習用サーバ learner01
接続方法ssh student@learner01
必要権限一般ユーザー(sudo 不要)
所要時間約 8 分
🛟 失敗しても安全: この章で打つのは「読み取り系」のコマンドだけ(whoami / hostname / pwd / id / date)。何かが壊れる操作はしていません。パスワードを間違えても ssh を打ち直すだけ。何度でもやり直せます。

STEP 01 · 踏み台から learner01 に SSH する

踏み台 workstation01 のターミナル(alice@workstation01:~$ というプロンプトが出ています)で、まずはこのコマンドを打ってみてください:

bash · ログインコマンド
ssh student@learner01

初めて接続するときは、こんなメッセージが出ます:

初回接続の確認メッセージ
The authenticity of host 'learner01 ...' can't be established.
Are you sure you want to continue connecting (yes/no/[fingerprint])?

これは 「このサーバ、初めて見るけど本当に繋いでいい?」 という確認です。学習環境なので yes と打って Enter。続いてパスワードを聞かれます。パスワードは予約後に運営より個別にご案内します(確認メールの自動送信は準備中です)。入力中の文字は画面に表示されませんが、ちゃんと入力されています(セキュリティ上の仕様です)。
パスワードが見当たらない・メールが届いていない場合は、演習サーバへの接続方法のトラブル欄を確認してください。

Permission denied (publickey,password)」と出たら: パスワードがまだ/違うサインです。ssh student@learner01 を打ち直してパスワードを入れ直してください。何度でもやり直せます。

STEP 02 · 現在地を確認する 5 つのコマンド

ログインに成功すると、プロンプトが alice@workstation01:~$ から student@learner01:~$ に変わります。この瞬間、あなたは踏み台から一段奥の learner01 の中に居ます。プロンプトが変わったことが「現在地が変わった」サインです。

ここで、自分の現在地を 5 つの角度から確認してみます:

bash · 現在地を 5 つの角度で確認
whoami     # 自分が誰として入っているか
hostname   # 接続先のホスト名
pwd        # 現在のディレクトリ(絶対パス)
id         # ユーザー番号と所属グループ
date       # サーバ側の現在時刻

こんな出力が見えるはずです:

実行例(出力)
alice@workstation01:~$ ssh student@learner01
student@learner01's password: ********
Welcome to Ubuntu 24.04 LTS ...

student@learner01:~$ whoami
student

student@learner01:~$ hostname
learner01

student@learner01:~$ pwd
/home/student

student@learner01:~$ id
uid=1001(student) gid=1001(student) groups=1001(student)

student@learner01:~$ date
Sun May 10 14:32:18 JST 2026

id の uid の数字(1001 など)は環境によって変わります。「例と数字が違う」と感じても問題ありません。大事なのは (student) というユーザー名が表示されていることです。

STEP 03 · GOAL ── ログアウトして踏み台に戻る

確認が終わったら、こう打って learner01 から抜けます:

bash · ログアウト
exit
logout
Connection to learner01 closed.
alice@workstation01:~$

プロンプトが alice@workstation01:~$ に戻れば成功です。踏み台に戻ってきたということ。learner01 と踏み台、2 つの場所を行き来できる感覚を覚えておいてください。最後に alice@workstation01:~$ に戻れば、踏み台に帰還した合図です。プロンプトの「左側の名前」だけ見ても、自分が今どっちのサーバに居るかが瞬時にわかる ── これがプロンプトの威力です。

ゴール到達 ✓ ① 踏み台から learner01 に SSH でログインできた / ② プロンプトの変化を確認した / ③ whoami・pwd などで現在地を確認できた / ④ exit で踏み台に戻れた。

つまずきポイント

ハマり #1 · パスワードを 3 回間違えて切られた

落ち着いて ssh student@learner01 をもう一度打つだけです。何度でもやり直せます。パスワードはタイプ中に画面に表示されません(セキュリティ上の仕様です)。ゆっくり入力してください。

ハマり #2 · 画面がフリーズしたように見える

Ctrl + C でコマンドを中断してみてください。それでも反応しない場合はターミナルウィンドウごと閉じて、もう一度開き直してください。Guacamole セッション自体を更新しても OK です。

ハマり #3 · ssh: connect to host learner01 port 22: Connection refused

演習サーバ learner01 が停止している可能性があります。右ペインのサーバ状態を確認し、「停止中」になっていたら講師に連絡してください。

  • 原因: VM が起動していない、または SSH サービスが止まっている
  • 対処: 自分では直せないため講師に連絡

AI に相談

AI わからないところを自由に質問できます
この章の内容を踏まえて、SSH・Linux の基礎にやさしく答えます

修了確認

学んだことが身についたか、2 問だけ確認してみましょう。

問 1 · プロンプトを読み解く

次のプロンプトを見て、(a) ユーザー名(b) ホスト名(c) 現在のディレクトリ を答えてください。

alice@workstation01:/var/log$
解答を見る
  • (a) ユーザー名: alice
  • (b) ホスト名: workstation01
  • (c) 現在のディレクトリ: /var/log

ポイント: 本文中の ~ は「ホームディレクトリの省略」でしたが、/var/log のような具体的なパスが入っていれば、現在地はそのパスそのものです。/var/log はサーバのログが集まる場所で、これから何度も登場します。

ちなみにこの例の alice@workstation01、見覚えありませんか?あなたが演習開始時に居る踏み台ターミナルのプロンプトそのものです。プロンプトを読む練習を、自分の現在地で日々やっているということです。

問 2 · 実機で確認

演習用サーバにログインしている状態で、「自分のホームディレクトリの絶対パス」を表示するコマンドは何でしたか?

※ STEP 03 で exit して踏み台に戻った人は、実際に試すなら ssh student@learner01 でもう一度 learner01 に入り直してから打ってください。

解答を見る
pwd

pwdprint working directory の略。student ユーザーのホームは /home/student なので、結果もそうなります。

別解: echo $HOME も同じ結果を返します。ただし「今いる場所」と「自分のホームと決められている場所」の違いがあるので、ディレクトリを移動すると差が見えます。試しにディレクトリを移動してから両方打つと違いが見えますが、それは Chapter 2 のお楽しみに。

💡 修了確認の段階ヒント(問 1・問 2)

💡 段階ヒント 1 段目:軽く方向だけ

問 1(プロンプトを読む): プロンプトは @ の左が「誰(ユーザー名)」、右が「どこ(ホスト名)」、: の右が「今いる場所(ディレクトリ)」という決まった構造です。

問 2(コマンドを思い出す): 「今いる場所 = 現在地」を表示するコマンドを思い出してください。この章の演習で使いました。

💡 段階ヒント 2 段目:もう少し具体的に

問 1: student@learner01:~$ を 3 つの要素に分解してみましょう。@ の左 / @ の右 / : の右 ── それぞれ何が入っていますか?

問 2: p で始まる 3 文字のコマンドです。print working directory の頭文字を並べた名前です。

💡 段階ヒント 3 段目:答えと解説

問 1 の答え:

  • (a) ユーザー名 = @ の左: alice
  • (b) ホスト名 = @ の右(: の前): workstation01
  • (c) 現在のディレクトリ = : の右($ の前): /var/log

問 2 の答え:

pwd

pwdprint working directory の略。student ユーザーのホームは /home/student なので、結果もそうなります。

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この章で、踏み台 workstation01 から演習用サーバ learner01 に SSH でログインし、プロンプトを読んで「今どこに居るか」を自分の目で確認しました。ssh student@learner01 で「会いに行く」感覚を体に覚えたこの経験が、Linux 学習の出発点です。ログインしたあなたが次に直面するのは、「このサーバの中、ファイルがどう並んでいるんだ?」という疑問です。

Chapter 2: ファイルシステム階層 ── Linux の「土地勘」を掴む:
  • //home/etc/var/usr/tmp それぞれの意味と歴史
  • 「あのファイルはどこに置けば正解か」が自然に分かるようになる
  • learner01 の中をディレクトリで巡る演習(ls / cd / tree

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