⏱ 約 20 分
Part 1Chapter 02/Linux 基礎

ファイルシステム階層と移動の基本

Linux のファイルシステムという「地図」── /etc・/var/log・/tmp・/home の意味と配置を体で覚えて、初めて触るサーバでも 5 秒で当たりがつく感覚を手に入れます。

所要時間約 20 分
章タイプstandard
前提知識Chapter 1(SSH でのログイン / プロンプトの読み方)
使用機材踏み台 workstation01 + 演習用サーバ learner01
関連章前: Chapter 1「初回ログインと bash プロンプトの読み方」/ 後: Chapter 3「ファイルとディレクトリの基本操作」

どんな初めてのサーバにも、同じ「地図」が描かれている

前の章で、踏み台 workstation01 から演習用サーバ learner01 に SSH でたどり着きました。プロンプトが student@learner01:~$ に変わった瞬間、あなたは確かに 1 段奥の Linux の中に居ます。

ここから一つ、プロの目を借りるような感覚を身につけます。

新しいサーバを任されたとき、ベテランは何から見るか? 多くの場合、まず「設定ファイルはどこ?」「ログはどこ?」「自分の作業スペースはどこ?」という見当を、コマンドを打つ前から付けています。これができるのは、Linux のファイル配置に世界共通の「地図」があるからです。

AWS の EC2 でも、自社オンプレの古いサーバでも、Raspberry Pi でも ── 設定は /etc・ログは /var/log・一時ファイルは /tmp。この地図は変わりません。一度頭に入れてしまえば、初めて触るサーバでも 5 秒で当たりがつく。これがこの章のゴールです。

この章を終えるとできること

Linux のファイルシステムという「地図」を頭に入れて、4 つの操作でどこにでも自在に動き回れるようになります。

$ cd /var/log
learner01:/var/log$
動く
cd でディレクトリを
自由に移動できる
cd
$ ls /etc
眺める
ls でディレクトリの
中身を確認できる
ls
$ pwd
/var/log
知る
pwd で今どこに居るか
正確に確認できる
pwd
/home/student絶対
../student相対
書く
絶対パスと相対パスを
使い分けられる
/ · ..

概念説明

1. Linux のファイルシステムは「一本の木」

Windows では C:\D:\ というドライブ文字でストレージを区別します。Linux は違います。どんな大きなシステムでも、すべてのファイルは /(ルート) から始まる一本の木構造の中に収まっています。

/                          ← ルート(木の根っこ)
├── home/                  ← ユーザーの家
│   └── student/           ← student の個人スペース
├── etc/                   ← 設定ファイル置き場
├── var/                   ← 変化するデータ(ログなど)
│   └── log/
├── usr/                   ← インストールしたプログラム群
│   └── bin/
├── tmp/                   ← 一時ファイル置き場
└── bin/                   ← 基本コマンドの実行ファイル

外付け USB を挿しても、追加のディスクを増設しても、Linux はそれを /mnt/usb/data のような「木のどこかの枝」として取り込みます。世界はひとつの木で、外部のストレージはその木に接ぎ木する ── この感覚が Linux の根っこです。

2. なぜこの配置になっているのか(FHS の話)

/etc って "et cetera" の略らしいけどなんで設定ファイル置き場?」── と素朴に思った方、するどいです。実はこれ、1970 年代の Unix の慣習がそのまま現代まで残っているのです。

当時のディスクは小さく、複数台に分けて使うのが普通でした。「起動に必要な最小限のものは /」「ユーザーが使う大きなプログラムは /usr」「変動するデータは /var」── と、ディスクの役割で分けたのが始まりです。

1990 年代に、この慣習をきちんと文書化したのが FHS(Filesystem Hierarchy Standard) です。今では Ubuntu、Debian、Red Hat、AlmaLinux、Raspberry Pi OS など、Linux 系 OS がほぼ全部この標準に従っています。だから「初めてのサーバでも地図が読める」。50 年積み重ねた文化の利息を、私たちは毎日タダで受け取っています。

3. 主要ディレクトリの「役割と覚え方」

ディレクトリ役割覚え方
/全体の根っこ。ここより上はないルート(root)
/home一般ユーザーの個人スペース。student なら /home/student家(home)
/etcシステム・サービスの設定ファイル置き場。動作を変えたいときはここを見る"et cetera" が語源だが「設定の宝庫」と覚えてよい
/varVariable(変化する)データ。ログ・メール・DB など実行中に増減するもの変化する(variable)
/var/logログファイルの定番置き場。/var/log/syslog などログはここ
/tmp一時ファイル。再起動するとだいたい消える一時的(temporary)
/usrインストールしたアプリ・コマンドの実行ファイル・ライブラリユーザーが使うもの(user)
/bin/usr/binコマンドの実体。lscd の実行ファイルがここにあるバイナリ(binary)

AWS 的な感覚で言えば:/etc ≒ EC2 の設定パラメータ / /var/log ≒ CloudWatch Logs に流れる前の生ログ / /tmp ≒ Lambda の /tmp(実行中だけ使えるスクラッチ領域)。

4. 絶対パスと相対パス

ディレクトリの場所を表す方法は 2 種類あります。

絶対パス/ から始まるフルパスです。どこに居ても同じ場所を指します。運用作業では絶対パスを使うのが原則(typo しても意図しない場所に当たらない)。

絶対パスの例
/home/student/work/memo.txt   # / から始まる → 絶対パス

相対パスは「今居る場所からの相対的な位置」で表します。/ から始まりません。.. は「一つ上のディレクトリ」、. は「今いるディレクトリ自身」を指します。

相対パスの例(今 /home/student に居るとき)
work/memo.txt        # /home/student/work/memo.txt と同じ
../student2/         # 一つ上の /home に上がり student2 に入る

試してみよう:learner01 のファイルシステムを巡る

ここからが実機演習です。右の演習ターミナル(踏み台 workstation01 のもの)から learner01 に SSH してください。

🛟 この演習は全部「見るだけ」です

打つコマンドは ls / cd / pwd / echo のみ。ファイルを作る・消す・書き換える操作は一切しません。どこかで詰まっても cd ~ を打てばホームに戻れます。何度でもやり直せます。

まず learner01 に入る

bash · workstation01 から SSH
ssh student@learner01

ルートの直下を眺める

/ 直下にどんなディレクトリがあるか一覧表示します。概念説明で出てきた名前が並んでいるはずです。この地図はこの learner01 だけでなく、世界中の Linux サーバで同じです。

bash
ls /

設定ファイルの宝庫 /etc を覗く

cd でディレクトリを移動し、pwd で現在地を確認する癖をつけましょう。/etc/ssh/sshd_config は SSH サーバの設定、/etc/hosts は名前解決の設定(learner01 というホスト名が引けたのも、踏み台の /etc/hosts のおかげでした)。

bash
cd /etc
pwd
ls

ログの溜まり場 /var/log に移動する

syslogauth.logdpkg.log ── サーバが「自分の出来事を書き残している」ファイルたちです。Part 3 や Part 7 で、これらを読み解いていきます。

bash
cd /var/log
ls

相対パス .. で「一つ上」に上がる

/var/log に居る状態で、.. を 2 回使って /(ルート)まで上がります。

bash
cd ..       # /var/log → /var
pwd         # /var
cd ..       # /var → /
pwd         # /  ← ルート。これより上はない

ホームに帰る・$HOME を確かめる

cd ~ でどこからでもホームに戻れます。そして Chapter 1 の最後で「echo $HOME は Chapter 2 のお楽しみに」と書きました。ここで確かめてみましょう。

bash
cd ~              # どこに居ても一発でホームへ
pwd               # /home/student
echo $HOME        # /home/student(同じ値)

pwd は「今いる場所」を返します。echo $HOME は「自分のホームと決められている場所」を返します。今ホームに居るので同じ値に見えますが、試しに cd /tmp で移動してから両方打つと差が見えます ── それは修了確認問 2 で試してもらいます。

ホームの中を「全部」見る ── ls -la

ホームに帰ったら、せっかくなので中身を眺めてみましょう。ls だけだとほとんど何も見えないはずです。-a-l を足すと、隠しファイルまで含めて詳細表示されます。

bash
ls            # ほぼ空に見える
ls -la        # 隠しファイル + 詳細表示
オプション意味
-a隠しファイルを含める. で始まるファイル名のもの全部)
-l詳細表示(権限・所有者・サイズ・タイムスタンプを 1 行で出す long format)

Linux では . で始まるファイル名 = 隠しファイル という慣習で、.bashrc.profile.ssh/ などログイン時の設定ファイルが多く該当します。-a を付けて初めて見えます。

ls -la の実機表示例
合計 32
drwxr-x--- 5 student student 4096  5月 12 08:48 .
drwxr-xr-x 6 root    root    4096  5月 12 08:47 ..
-rw-r--r-- 1 student student  220  3月 31  2024 .bash_logout
-rw-r--r-- 1 student student 3771  3月 31  2024 .bashrc
drwx------ 2 student student 4096  5月 12 08:48 .cache
drwx------ 3 student student 4096  5月 12 08:48 .local
-rw-r--r-- 1 student student  807  3月 31  2024 .profile
drwx------ 2 student student 4096  5月 12 08:48 .ssh
この章はここまで見えれば OK: いま注目してほしいのは ① ドットで始まる隠しファイルがズラッと現れること② 行頭が d ならディレクトリ の 2 点だけです。左端の -rw-r--r-- のような 権限の 9 文字は、まだ読めなくて大丈夫(Chapter 7 でじっくり解剖します)。
  • 先頭の ...自分自身親ディレクトリ のショートカット(§03 で出てきた .. の正体)
  • 各行の -rw-r--r--drwxr-x---権限Chapter 7 で詳しく解剖 します / 今はとりあえず先頭の d が付くものがディレクトリ)
  • サイズ・更新日時も一目で分かるので、サーバ運用では ls -la がほぼデフォルト

このあと Chapter 3 以降では、ファイル一覧を見るときに ls -la を多用します。隠しファイルこそがサーバ運用の本体(設定ファイル)だからです。

詰まったら

段階ヒント

💡 軽く方向だけ
cd の後にスペースを空けてディレクトリ名(またはパス)を書きます。/ から始めると絶対パス、始めないと相対パスです。
💡 具体的なコマンドの形
迷ったら絶対パスが安全です。cd /etccd /var/log のように / から始めると、今どこに居ても確実にその場所へ行けます。現在地は pwd でいつでも確認できます。cd ~ または cd だけでホームに戻れます。
✅ 答えを見る
cd /etc           # /etc へ(絶対パス)
cd /var/log       # /var/log へ(絶対パス)
cd ..             # 一つ上へ(相対パス)
cd ~              # ホームへ
pwd               # 今いる場所を確認
echo $HOME        # 自分のホームの場所を確認

cdpwdls の 3 つさえ覚えれば、Linux のファイルシステムを自由に歩き回れます。

AI に相談

AI わからないところを自由に質問できます
この章の内容を踏まえて、Linux の基礎にやさしく答えます

修了確認

学んだことが身についたか、2 問だけ確認してみましょう。

問 1 · 役割の違いを説明する
/etc/var役割の違いを、それぞれ一文で説明してください。「どんなファイルが置かれるか」「再起動でどう振る舞うか」を意識すると書きやすくなります。
問 2 · 2 通りのコマンドで同じ答えを出す
learner01 で cd /tmp した後に、「自分のホームディレクトリの絶対パス」を表示するコマンドを 2 通り答えてください。

次の章へ

次は Chapter 3「ファイルとディレクトリの基本操作」 です。

ディレクトリを歩き回れるようになった次は、ファイルを作ったり・コピーしたり・削除したり・中を見たり する操作を学びます。touchmkdircpmvrmcatless ── Linux 操作の「基本動作」がそろいます。

exit で踏み台に戻って休憩しても、このまま進んでも OK です。